原書房・山本史郎 訳・1999年4月刊行

アンデルセン渾身の名作9編が、ラッカム、デュラック他20世紀を代表するクラシックな挿画とともに美しい愛蔵絵本になった! 裸の王さま、親指姫、ナイチンゲール、お姫さまとエンドウ豆、いちずな錫の兵隊、人魚姫、火口箱、マッチ売りの少女、みにくいアヒルの子。

ヨーロッパ的なもの

アンデルセンは19世紀を生きたデンマークの作家である。

アンデルセンが書いた作品については、あらためて言うまでもないほど有名であるが、諸国の国民性や「癖」のようなものを知るには、その土地の童話・おとぎ話に触れてみるのが一番身になり為になるのではないかと思える。

ついに全員が「でも何も着てないじゃん!」の大合唱となりました。(裸の王さま)

読めば読むほど「ヨーロッパ的なもの」の、そのエッセンスがあふれ出し、堪能することができる。

こうしてこの女性が正真しょうめいほんもののお姫さまだということがわかりました。二十枚のマットレス、二十枚の羽根ぶとんの下のエンドウ豆を感じたのですからね。こんなに肌がうすいのは、ほんもののお姫さまの証拠でなくてなんでしょう。(お姫さまとエンドウ豆)

そして、そのエッセンスの、何というか「だし」として感得できるのが、アンデルセンその人の眼差しである。

富み驕れる者や、貧しいが清い者への、諧謔や、はたまた温もりのある眼差しである。

思い通りにならないこの世界で

特に感動したのは「人魚姫」かな。

誰もが知っているようなおとぎ話だが、とても美しい話だ。

私たちは人魚ではないが、どちらにせよ思い通りにならないこの世界で、どういう価値観を持って、人生の幸福を追求すべきかを教えてくれる話だった。

少なくとも、何でも欲してやろう、何でも得てやろう、とか強欲になっている限りは、なかなか本質的な幸福は訪れないんじゃないですかね。

人魚姫は透きとおった腕を太陽の方にさしのべました。するとそのときはじめて、涙が目をぬらすのを、人魚姫は感じました。

アンデルセンのアンデルセン・クラシック 9つの物語