素晴らしい。非常に考えさせられました。
舞台
素行不良の上、突飛な言動ばかりおこす主人公のマクマーフィ(ジャック・ニコルソン)は、強制労働を逃れたいが為に精神異常を装っているのではと疑われ、刑務所から精神病院へと移送されてきました。
あらすじ
無理に薬を飲まされ、ワールドシリーズも観させてくれない病院に彼は反発し、患者達も巻き込んであらゆる騒ぎを起こします。
患者も彼と接するうちに、次第と生き生きとした心を取り戻していき、遂には脱走を図るまでにいたりますが……。
以下ネタバレ注意。
マクマーフィの物語
この映画は管理体制への反抗や、人間の尊厳の回復といったテーマで語られることが多いようですが、私は何よりも、主人公マクマーフィその人の内面の物語なのだと解釈しました。
パーティーのあと、彼は逃げられるのに逃げなかった。
(ビリーが女とヤリ終わるのを待ってるうちに酒がまわってきて寝てしまったという解釈もありだけど)
彼の表情をアップにしたシーンが長時間流れます。
彼は何を思ったのでしょうか。
カッコーの巣の上で、何を思ったか
①自分でも知らぬ内に、患者達との友情が深くなっていることに気付き、去ることをためらった。
②脱走したとして、明るい前途が開けているのかと不安になった。
彼は「実は病院に愛着を感じてしまっていた」。
そして③
彼は彼自身、自己の狂気に怯えていた。
悪党然としてあるがままにふるまっているようでも、彼は突発的に起こしてしまう自分の狂暴な行動に、制御できない狂気の輪郭を感じていたのではないか。
そして逃げるよりも、この病院で何とか治療を受けたほうが良いのではないかと、葛藤したのでは。
誰もがカッコーの巣の上に居続けられるわけではない
……結果的にビリーは自殺し、マクマーフィは婦長を絞め殺そうとするにいたります。
自身に根付く狂気への恐怖、ビリーの死に対する自責、マクマーフィはその後再度脱走を図りますが、病院側に捕えられ、電気ショック療法で廃人にされます。
これも私の予想ですが、彼は病院から逃れる目的で脱走したのではないんじゃないかなと思います。
捕えられ罰を受けるために脱走した、
ある種の自殺行為だったと私は解釈します。
そして衝撃的かつ感慨深いエンディング。
手塚治虫『火の鳥 鳳凰編』を思い出しました
大袈裟かもしれませんが、ある種、神話的・宗教的な感想すら覚えました。
『火の鳥 鳳凰編』に近い印象ですかね。
相当に深い、人間性について考えさせられる映画でした。
皆さんもご覧になってみてはいかがでしょうか?