松本人志自身の感性は革命的であった
私はお笑いタレントとしてのダウンタウンは好きである。
それほどコアなファンでもないけれども、日本人の「笑い」に対する認識と幅の広さを革命的に変化させたという意味で、松本人志ほど重要で偉大な人間はいないと思うし、その気持ち
はこれからも変わらないだろう。
『大日本人』、最低だった……。
私は別にさほど多くの映画を観てきたわけではないけれども、その中でもダントツの酷さだろう。
昔映画館で観たが、他の観客も「あんな映画じゃ日本人が……」と言っていたが、確かに「日本の恥」とすら言える出来だった。
実際はカンヌでもスベッていたようだし、それを「カンヌでも大爆笑」「北野武の再来」と騒ぎ立てたマスコミの欺瞞性を、改めて思い知らされる結果となった。
この映画の酷さは松本の監督としての素養云々以前に、吉本興業の独善性というか、傲慢ぶりの反映なんじゃないか?(実際そうでしたね……)
若手芸人の宮川大輔(?)の声で「殺すぞ!」という台詞が出てくるんだが、それはこっちの台詞である。
長尺でパッケージされた喜劇物は難しい
もちろん、おもしろい所も少しどころか、たくさんあった。
間、発想など「さすが松ちゃん」といった具合で、何度も笑った。
でもそれは、切れ切れなのである。
そして映画であることの必然性は残念ながら無い。
どうしても駄目だった点が2つ
まず、生理的にグロテスクなシーンが多くあったこと。
私はこれは松本の悪い癖の最たるものだと思う。
コントでも、ディテールのグロいものを作ってきていたので、ある程度許容はしてきたのだが、どうしてもこれが「笑い」とマッチするとは思えない。
そして終盤のあまりの酷さだ。
正直これさえ無ければ、私もだらだらとこんな批判的な文章を書くことはなかった。
金を払わせてあんなものを観せるのは犯罪的である。
監督本人も「今まで観たことのない映画になるでしょう」と言っていたが、確かにこんなに酷いものは観たことがない。
こんなにサムいのありえへん。
概ね、以上のような感じだ。
天才の生み出すものは全て傑作というわけではない
繰り返すが、私はダウンタウンも松本人志も好きだ。
「ガキの使い」は観るし、暇な時はユーチューブでダウンタウンの動画を観るだろう。
ダウンタウンも松本人志もおもしろい。
ただ、『大日本人』は最悪だ。
……それで他の人の感想とか見て、すごく深い視点から論じられたものに「なるほどね」とか思ったりもしたわけなんだけど……。
確かに細かい単位のギャグはすごくおもしろいんだけどね、天才松本といった所なんだけど……。
でもやはり、「ああ~やっちゃった~」って感じだね……。