新潮文庫・福田恆存 訳・1967年9月刊行

永遠の古典。シェイクスピア悲劇の最高傑作。To be,or not to be,that is the question.

城に現われた父王の亡霊から、その死因が叔父の計略によるものであるという事実を告げられたデンマークの王子ハムレットは、固い復讐を誓う。道徳的で内向的な彼は、日夜狂気を装い懐疑の憂悶に悩みつつ、ついに復讐を遂げるが自らも毒刃に倒れる――。恋人の変貌に狂死する美しいオフィーリアとの悲恋を織りこみ、数々の名セリフを残したシェイクスピア悲劇の最高傑作である。(以上、新潮社HPより)

戯曲や詩を読むこと

歴史を知りたい、社会学を知りたい、人類学を知りたい、心理学を知りたい、哲学を知りたい……などの知的欲求がムクムクと湧き上がれば、それぞれの専門書や古典にあたることが、最もステディな知識や教養との付き合い方であろう。

それこそマックス・ヴェーバーやフレイザーやユングやフーコーやヘーゲルなどにあたればよい(しんどい時もあると思うが……)。

しかし、知識や教養の蓄積といったものとは違う、一筋の鋭利な細剣で頭の芯を貫かれるような、そんな稲光のような知の獲得!全知全能への接地!みたいなルナティックな体験をまれに与えてくれるのが、戯曲と詩のテキストではないだろうか?

詩でいえばウィリアム・ブレイクやヘルダーリンが与えてくれる啓示は「一瞬にして永遠」のようなもので、それが読んだ者の血肉として残るかは不明だが、読んだその一瞬に、世界のはじまりから終わりを知覚することになる。

戯曲でそのような体験を得られる作家は誰かと言われれば、それはやはりシェイクスピアなのだろう。

ベケットも相当なものだと思うが。

含蓄のあるレトリック

とにかく短い言葉で世間や社会や人生を的確に言い表す、そのレトリックの妙に興じるだけで充分といえるだろう。

『マクベス』や『リア王』ももちろん深いが『ハムレット』の広さと深さをまずは楽しんでみよう。

ちなみに、私の一番好きな台詞は、

「苦いぞ、苦いぞ、にがよもぎ。」

である。

シェイクスピアのハムレット