トレーラーの追い風に目を傷めて、おちょぼ口で吸い吐きしたあと空を、見たら、コールタールの大天井に金赤の菊が咲いた。
僕という十一の男の「セクス」が啄木鳥みたく振れるたびに、青緑のマリーゴールド、蛍光のアイリス、焦げ茶アネモネ、レモネード・ローズ。,
向かいの通りで妹が呼んでいる。
「早くしないと桃が売り切れちゃう」
まだなんにもわからない妹に僕は教えてやる。
ほんとはもうとうに店は閉まっていて、ママがおじさんに顔が利くからまだ大丈夫さ。
見上げると大人の妹のウエディングドレスが白銀に輝いて。
僕の後ろを通り過ぎた上級生が、同じく夜空を見て言った。
「素敵な御祭り」
僕は右左を見て向かいに渡り、妹の小さな左手を握り、店へと急いだ。