言葉の真の意味で「純文学的」な作家

戦後日本文学を代表する純文学作家である。

共に芥川賞作家である保坂和志との交流で、近年若い読者からの注目も集まっている。

とにかく、どうにもつかみ所のない作家だな、というのが正直な印象。

平凡と言えば平凡なあらすじ

昭和40年あたりを舞台として、妻と在日米兵の不倫を知った中流知識人の男が、妻と2人の子供との家庭を立て直そうと家を豪華に改築したりと奮闘するも、妻を乳癌で亡くし、再婚もままならず、息子に家出をされるまでの顛末を描いた作品である。

何がすごいのか上手く説明できない小説

文体も一見無骨というかそっけないし、話の展開や構成もびっくりするほどお粗末に見えたりもしてしまうのだが、読中読後には「唯一無二の傑作」という感想しか抱けなくなってしまう
のだ。

「戦後」「日本とアメリカ」「家族観の喪失」「悲劇と喜劇」など、「それらしい」テーマはいくつでも挙げられるのだが、とてもそんな観点だけでは片づけられないものがある。

カフカ的といえなくもないのだが、とにもかくにも上手に形容できない作品である。

空恐ろしささえ覚える。