岩波文庫・竹内好 訳・1955年11月刊行
人が人を食うという妄想にとりつかれた「狂人日記」の「おれ」,貧しい日雇い農民でどんなに馬鹿にされても「精神的勝利法」によって意気軒昂たる阿Q.表題二作とも辛亥革命前後の時代を背景に,妄想者の意識・行動をたどりながら,中国社会の欺瞞性を鋭くえぐり出す.魯迅最初の作品集『吶喊』の全訳.(以上、岩波書店HPより)
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自意識炸裂系の小説
自意識炸裂系の小説、と勝手に呼称している作品群がある。
芥川龍之介の晩年の作品であったり、ゴーゴリの『外套』であったり、ゴンブローヴィッチの『フェルディドゥルケ』であったり、自意識過剰どころか自意識が炸裂しており、小説世界内での現実が歪曲され、変容していく小説である。
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『阿Q正伝』も『狂人日記』も、自意識炸裂系の小説である。
ただ、炸裂したところで、読者はいい意味での「感動」などせず、主人公にも決して幸福な結末は訪れない。
それは、近代中国とその人民たちの問題点を、克明に浮き彫りさせていることを意味している。
現代日本でいえば
『阿Q正伝』も『狂人日記』も、読んで感じるのは、別に現代の日本でもこういう人いるよなーということだ。
なかなか、ブラックなアプローチではあるが、魯迅のこうした現代性や普遍性はやはり大したものだと思う。
「阿Q」などは、ネットを探れば腐るほど居る。
そういった人物像や国民性をあざ笑うのではなく、批判的に乗り越えよ、ということなのだろう。

