岩波文庫・平石貴樹/新納卓也 訳・2007年1月刊行

斬新な語りの手法と構成と技法で,新しい文学の開拓に果敢に挑んだ若きフォークナー(1897-1962)の野心作.

内的独白,フラッシュバック──斬新な手法と構成で,新しい文学表現に挑んだフォークナーの最初の代表作.語り手たちの内的世界のかなたに,アメリカ南部を舞台とした兄弟たちの愛と喪失の物語が浮かびあがる.作者自身「自分の臓腑をすっかり書き込んだ最も壮麗な失敗作」と呼び,この作品を深く愛した.

斬新な手法と構成で,新しい文学表現に挑んだフォークナーの最初の代表作.語り手たちの内的世界のかなたに,アメリカ南部を舞台とした兄弟たちの愛と喪失の物語が浮かびあがる.この作品の成立によってフォークナー独自の創造世界は大きく開花し,世界の文学にも幅広い影響を与えた.のちに書かれた「付録」も収録.(以上、岩波書店HPより)

硬派でありガチンコでありストロングスタイルである

とにかくガチンコで楽しめる小説だ。

序盤からお手上げになりそうだったが、訳注が丁寧なので何とか読み進めている。

もちろん一文一文完全に理解できているかと言われれば全くだけど、別に学者じゃないわけだし。

世界文学に屹立する難読作

舞台は20世紀初頭のアメリカ南部。

コンプソン家というかつての名門一族の没落を描いている。

全4章構成だが、前半2章の、白痴の三男と妹への近親相姦幻想に苛まれる長男の、フラッシュバックが多用された内的独白文体は、言語芸術の極点であり、一つの頂点である。

(南北)戦争後のアメリカ南部の呪縛、黒人と白人という深刻な位相、没落貴族の宿命と苦悩、依然革新的な小説手法、超がつくほどの難解さへの試み、写実的かつうねるような文体。

鮮明さとともに、いまだ読書家や研究者の前に君臨し続けている作家といえる。

基本的に各登場人物の一人称で話が進むわけだが、それがどの人物なのかも、あまりはっきり書かれていない。

太字ゴシック体の文が所々に挿入され、そこから過去や空想の場面へとフラッシュバックのように頻繁に転換していく。(巻末には場面転換表までついている)

同じく巻末には、各章ごとの主要出来事表が掲載されている。

これは逆にいえば、そのまま読むだけでは作中で何が起こっているのかさっぱり理解できない作りになっている、ということを意味している。

それでも、まだ「読める」

ほとんど人に読まれることを拒んでいるかのような小説だが、同じ作者の『アブサロム、アブサロム!』よりかは読みやすい。

とにかくガチで珠玉の古典である。