トシの黙示録的物語
私にはこの物語のキーマンはトシ以外に考えられなかった。
トシはキリストだ。
新井英樹がキリストを描くと、トシになるのだ。
新井英樹のようなクリエイターがキリストを描くと、それはそのままアンチキリストになってしまうということは、容易に想像できることだ。
トシという人間とその行動が、全て逆説的なキリストなのだ。
彼の断末魔の「殺したい奴を殺した訳とちゃうんや!! どこがどおでこおなったかっ まだっ なにもわからんのやっ 神さまっ!!」という台詞、これで日本の漫画は西洋宗教を看破したとすら言える。
モンちゃんは特に語るべき対象ではない
マリアが死んだ後、モンちゃんはスーパーサイヤ人化してしまったが(本当に退屈なキャラクターになったな)、彼の「抗うな。受け入れろ。すべては繋がっている」という台詞、思わせぶりという名の無責任な台詞だが、これは何のことはない、「すべて」と言っているがこれは「ヒグマドンとマリア(トシを加えてもいいだろう)」のことを言っているだけだ。
なぜなら、モンちゃんという人間の中で「すべて」という範囲のものは、ヒグマドンとマリア(+トシ)だけだからだ。
ヒグマドンとマリアが繋がっているなんてことは、容易に想像できる。
共に目を撃ち抜かれていることなども象徴的だ。
モンちゃんはスーパーサイヤ人化した後も、ただヒグマドンとマリアが「美しい」と言い続けただけのことであって、それ以上でも以下でもない。
周りが大袈裟に解釈しているだけ。
アンチ「セカイ系」
マリアはトシをこそ救うべきだったと思うのだが、日和見だろうか?
トシの口づけ(人工呼吸)でマリアが息を吹き返したシーンも、どこか意味ありげだ。
物語ラストは、今度は『2001年宇宙の旅』になってしまったが、私には新世界がモンちゃんの骸から成ったとは思えない。
1月25日新潟県豊越市で発見された、キリストの惨殺体の、生前ヘリコプターから銃で撃ち抜かれた(気付き!)右腕、そこから新世界が始まったと考えても、いいではないか。
ヒグマドンは可愛かった。
4巻後半の、車で逃げるモンちゃんの笑顔がとても幸せそうだった。
好きなキャラクターは塩見警部(補)。
以上。