ちょっとしたネガティブなことが、「あるよなぁ」と感じる
低俗な言い方だが、現代社会の現実をこれほど生々しく切り取った作品は、他になかなかないだろう。
雨宮処凛や、「格差社会」という言葉に興味のある人は読んでみるといい。
個人的には「サラリーマンくん」編を傑作だと思っている。
医療機器メーカーに勤める、30代前半の営業職員。既婚2子持ち。名は小堀。
同じ会社に勤める同年齢の営業職員。独身男。名は板橋。
小堀は営業所を異動してから営業成績が上がらず、上司からのパワハラに苛まれ、優秀な後輩社員からも軽視されている。
家庭もうまくいかず、仕事ばかりの夫に対して妻は離婚を考えている。
板橋は若い頃は誠実な社員だったが、客の医者の勧めで株に手を出し(医者に気に入られたい一心で)、多額の借金を背負う。
借金に気を取られるあまり、仕事もミスを重ね、客先の病院からも出入り禁止の通告をたびたびくらい、小堀と同様に職場で冷酷なパワハラを浴びている。
人格も捻じ曲がり、最低の男に成り下がった。
板橋は小堀の家から印鑑を盗み、その他手を尽くして小堀名義の融資金を得ることに成功する。
しかし、所詮悪事はうまくいかず、小堀の妻からそのことがばれ、被害は最小限に抑えられる。
小堀は精神に不調をきたし、休職する。
会社もリストラされた板橋はヤクザに脅され、再び小堀を道連れにした詐欺を強制される。
板橋は休職中の小堀を呼び出す。
小堀は板橋が自分を陥れたことを知っているが、呼び出しに応じ、昔の写真を見ながら、仕事や家族に対する決意を静かに語る。
呼び出しに来てくれたからそれでいい、これ以上自分を嫌いになりたくない、板橋は小堀
に詐欺の話を持ち出さず、闇金の車に乗せられ消息を絶つ(この結果に対して板橋の「無残な死」が暗示されている)。
以前よりかは良好になった状況の中、小堀は復職し、話は終わる。
……と、だらだらとあらすじを書いた。
めいめい受け止めてほしい。
きちんと生きていれば大丈夫だとは思うのだが、常にまなざしに力を入れて仕事をしなければならない。
「しっかし事務のコは定時で帰るのやめて欲しいよなぁ……夜こそ必要なのにさ!伝票整理とかして欲しいのにさ!」
「毎日悩んで迷って、少しずつ磨り減って、もう二度とない、かけがえのない人生を売っている」